リフォーム工事は、下地や基礎の見えない部分が事前に確認できず、かつ古い建物だと図面も残っていない場合がありクレームが発生しやすいです。
そのため、クレームが頻発すると悩んでいる工務店経営者も多いでしょう。
本記事では、リフォーム工事にありがちなクレーム、対処法について解説します。
この記事を読むと、リフォーム工事のクレームに対する対処法がわかります。
目次
リフォーム工事のクレームとは
リフォーム工事のクレームについては、公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センターが公表している資料から確認できます。
資料によると、2021年度のリフォーム工事の相談件数は7,249件です。
7,249件のうち雨漏りやひび割れの不具合に関する相談が4,701件(64.9%)、不具合以外の相談が2,548件(35.1%)となっています。
戸建住宅・マンションともに不具合の相談の中で最も多いクレームは、外壁・内壁・基礎のひび割れです。
続いて戸建住宅では雨漏り、設備機器や建具の性能不足と続きます。
マンションでは設備機器の性能不足、外壁や床のはがれが次点で多いクレームです。
リフォーム工事でクレームが起きる原因
リフォーム工事は生活空間を改善する重要なプロセスです。しかし、期待した結果が得られなかったり、不快な経験が発生したりすればクレームにつながります。原因はさまざまですが、大きく3つの要因に分類できます。
- 顧客と専門知識・経験に差がある
- コミュニケーションが不足している
- 顧客のニーズをくんだ提案ができていない
上記の要因に応じて、適切な対応を心掛けましょう。
顧客と専門知識・経験に差がある
リフォーム工事では顧客と施工業者との間に知識や経験の差があり、トラブルが発生するケースがあります。多くの顧客にとってリフォームは人生で数回あるかないかの経験で、建築や施工の技術的な知識は乏しい場合がほとんどです。
一方で、業者側はリフォームに関するプロであり、日々同じような作業を行っています。上記のギャップにより、業者が「常識」と考えることが顧客には理解できない状況が発生しやすくなります。
例えば、「仕上がりに少しのズレが生じるのは施工上の許容範囲」と業者が考えていても、顧客は「欠陥」と認識するかもしれません。上記のような認識のずれが原因で、工事後にクレームが生じるケースがあります。
解決策としては施工中に重要なポイントを顧客に丁寧に説明し、可能な限り視覚的に示しましょう。また、専門用語の使用を避け、顧客に分かりやすい言葉で説明する姿勢が大切です。
コミュニケーションが不足している
リフォーム工事におけるクレームの多くは、コミュニケーション不足が原因です。顧客が工事に対して不安や疑問を抱いていても、業者に伝えられないなどの事態が発生して問題が起こります。工事途中で生じたデザインの変更を顧客に上手く伝えられず、「想像していたものと違う」というクレームに繋がるケースもあります。
特に、工事の進捗状況に関する報告が遅れる・不十分であると顧客側に「業者が不誠実」という印象を与えかねません。結果として、信頼関係が損なわれてクレームがエスカレートするケースがあります。
解決するためには事前の打ち合わせを入念に行い、顧客の意図をしっかり把握することが重要です。また、定期的な進捗報告や写真付きの工事レポートを提供すれば、顧客との信頼を築けます。
顧客のニーズをくんだ提案ができていない
顧客のニーズをくんだ提案ができていないことも、クレームに繋がりやすい要因です。顧客のニーズを正確に把握して提案することはリフォーム工事において極めて重要です。しかし、業者が自身の好みに偏っているなど一方的な提案になると、顧客の期待から大きく外れてしまいます。上記のようなケースでは工事完成後に顧客が満足できず、「自分の意見が十分に反映されていない」と感じてクレームが生じてしまいます。
特に、リフォームは顧客のライフスタイルや価値観に大きく関わるものです。そのため、単なる見た目や機能性だけでなく、顧客がどのような気持ちで生活したいのかといった「背景」にも配慮しましょう。ヒアリングの際には過去の事例を見せてイメージを共有すれば、より顧客のニーズに寄り添った提案が可能になります。また、提案内容については逐一顧客に確認を取り、納得を得ながら進める姿勢が大切です。
リフォーム工事のクレームの種類
次にリフォーム工事に関するクレームの種類について解説します。
よくあるクレームを知ることで、どのような対策が有効か考えていきましょう。
仕上がりに関するクレーム
1つ目は仕上がりに関するクレームです。
工事が完了した後に施主から「イメージと違う」「細かい傷がついている」と言われるケースが該当します。
事前に細かい打ち合わせや仕上がりイメージを共有しても、実物を完璧に顧客へ示すことは難しいです。
イメージの違いに関しては契約書や打ち合わせ資料でしっかりと内容を説明していれば、工務店よりリフォーム会社が責任を負うことはないでしょう。
しかし施主は不満を持っているため、顧客満足度が低くなり追加受注やリピートは見込めなくなります。
また細かい傷がついていると言ったクレームは、程度によりますが真摯に対応すべきです。
お金を払って工事したのに、傷がついている状態で完成していると言われても、納得できない方は多いでしょう。
そのため「傷がある」「汚れが付着している」のようなクレームに対しては、原因を調べすぐに解決策を提案することが重要です。
工期に関するクレーム
2つ目のクレームは、以下のような工期に関するクレームです。
- 打ち合わせ通りに工事が始まらない
- 工期通りに工事が終わらない
- 工期の変更に関して相談がなかった
施主と工期の打ち合わせをしていても、資材が届かない、職人が集まらないと言った理由で予定通りに工程表通りに工事が進められないこともあるでしょう。
施主は工事をする期間は、家を空けるなど予定を立てていることが多いです。
そのため工期がずれてしまうと、施主が立てた予定が狂ってしまいクレームの原因となります。
仮にトラブルが発生して打ち合わせ通りに始められなくなった場合は、必ず施主に伝えましょう。
騒音に関するクレーム
3つ目のクレームは騒音に関するクレームです。
騒音は施主からではなく、近隣住民から発生しやすいクレームです
リフォーム工事は気をつけていても、大きな音が発生してしまいます。
そのためリフォーム工事前には、施主・工務店・リフォーム工事会社が近隣への挨拶をする必要があります。
しかしこの挨拶を怠ってしまうと、近隣住民からのクレームが発生しやすくなります。
加えてクレームを受けるのは、近隣住民が顔を知っている施主である可能性が高いです。
施主がクレームを受けてしまうと、今後の生活に影響が出る可能性があります。
そのために質の高い工事をしようとも、近隣住民から騒音に関するクレームが出ると、施主からの評価が下がる可能性が高いでしょう。
近隣住民からのクレームを避けるためには、着工前の挨拶前をしっかりおこなうことを徹底しましょう。
工務店がクレームを予防する3つの方法
工務店が実施できるクレームを予防する方法は以下の3つです。
契約前にリフォームのリスクを説明する
契約前にリフォーム工事のリスクを説明しましょう。
例えば先ほど説明した仕上がりに関するクレームは、展示場などで実物を見せると、施主と工務店でイメージの食い違いがなくなり、クレームが発生する確率が少なくなります。
またどのような場合に追加工事・料金が発生するのかを事前に説明しましょう。
古い住宅であるほど当時の図面が残っておらず、費用を正確に算出することは難しいです。
実際に壁を壊してみなければ、下地の状況などがわからないといったケースも多いです。
そのようなリスクを説明して、万が一の場合は追加費を請求するかもしれないリスクを説明しておくと、リフォーム工事のクレームを減らせます。
契約書・図面など書類を残す
着工前に施主への説明した内容を記載した契約書・図面は必ず残しておきましょう。
仮にクレームが発生した場合でも契約書や図面があれば、言った・言わないの水掛け論を避けられ、問題の拡大を防げます。
契約書や図面がないと最悪の場合、訴訟に発展し施主との関係が修復不可能にまでなってしまいます。
そのような事態を避けるためには、必ず契約書や図面を残しておきましょう。
契約外の工事は必ず合意を得てから実施する
契約外の工事は必ず同意を得てから実施しましょう。
リフォーム工事は、見えない部分の下地や基礎がどのようになっているのか正確にはわかりません。
図面があったとしても、図面通りできていない可能性もあります。
そのため現場の状況によっては追加工事をしないと、工事が進められなくなるケースも珍しくありません。
追加工事は必ず施主に工事内容と金額の了解を取り、可能であれば追加の契約書を作成してから取り掛かりましょう。
口約束だけだと、工事完了後に「そんな話を聞いていない」「勝手に行為を進められたので料金は払えない」と言われてしまう可能性があります。
そのような事態を避けるためには契約外の工事が必要な場合は、必ず施主の合意を得てから。進めるべきです。
クレームが発生してしまった場合の3つの対処法
気をつけていてもクレームは発生してしまうものです。
クレームを発生させてしまった場合は、以下3つの対処法を実践しましょう。
事実確認のうえ謝罪する
施主からクレームを伝えられたときは、すぐに謝罪するのではなく事実関係を確認しましょう。
事実関係を確認するまでは「ご迷惑をおかけして申し訳ございません」など、顧客に迷惑をかけたことについてのみ謝罪するようにしましょう。
クレームを伝えられたからと言っても、必ずしも工務店側が悪いとは限りません。
場合によっては、施主の認識の違い・思い違いによってクレームを伝えてきている可能性があります。
そのため、すぐに謝罪をするのではなく事実関係を確認することが大切です。
記録に残す
クレームの内容は必ず記録しましょう。
文章だけでなく、写真や図面も合わせて保存し、誰が見てもどのようなクレームだったかすぐにわかるような形にするのがベストです。
内容を記録していれば、社内への報告がスムーズにおこなえ、早期の問題解決につながります。
内容の記録におすすめの方法は、工務店に特化した業務効率化システムです。
業務効率化システムを導入すれば、案件・工事に関わるあらゆる情報を一元管理できます。
保存する情報によってツールを使い分ける必要がなく、欲しい情報を簡単に探せることがメリットです。
おすすめの業務効率化ツールは下記の記事で解説しているため、気になる方は参考にしてください。
クレーマーには法的措置を検討する
クレームの中には、金銭の要求を目的とした過激なものもあります。
そのような行き過ぎたクレームには、法的措置を検討しましょう。
行き過ぎたクレームには以下のようなものがあります。
- 謝罪をしても止まないクレーム
- 複数の解決案を示しても納得しないクレーム
- 金銭の要求をほのめかすようなクレーム
そのようなクレームに対しては担当者だけでなく、会社全体で対応する必要があります。
クレームの内容を録音・記録し、警察や弁護士に相談しましょう。
リフォーム工事のクレーム対応に関するよくある質問
リフォーム工事のクレーム対応に関するよくある質問として、以下の3つを紹介します。
クレーム対応で疑問がある場合は、上記質問への回答を参考にしてください。
クレーム対応を上手におこなうコツは?
クレーム対応を上手に行うための第一歩は、「相手の気持ちを受け止めること」です。不満や怒りを抱えた顧客に対しては、まずは冷静に話を聞いて共感を示す姿勢が重要です。特に、「ご迷惑をおかけして申し訳ございません」といった謝罪の言葉を迅速に伝えると、顧客の感情を和らげる効果があります。
次に、具体的な事実確認を行いましょう。顧客が不満を感じているポイントを明確にし、原因や状況を把握します。事実確認の際、顧客の意見を遮らずに聞き取ることが信頼回復への第一歩です。
そして、問題を共有したうえで迅速かつ具体的な対応策を提案しましょう。たとえば、施工の修正が必要であれば、可能なスケジュールや費用負担について具体的に説明して納得を得られるよう努力します。
クレーム対応でやってはいけないことは?
クレーム対応の際にやってはいけないことの代表例は、顧客の感情を無視した対応です。「それは仕様です」「弊社に非はありません」などと感情を逆なでするような発言をすると、クレームがさらに悪化する可能性があります。また、顧客の意見を軽視して一方的に業者側の意見を押し付けることもトラブルを大きくする原因です。
もう一つ避けたいのは、対応が遅れることです。顧客が問題を指摘した際に、「担当者が不在です」「後日ご連絡します」といった曖昧な返答をしないようにしましょう。
上記の対応だと顧客は「自分のクレームが軽視されている」と感じ、不満を募らせます。迅速な対応が求められる場面では担当者へ迅速に取り次ぐか、最初の対応で誠実さを示すことが必要です。
さらに、問題をうやむやにしようとする姿勢や責任を他者に転嫁する行動も絶対に避けるべきです。「下請け業者のミスです」といった発言は信頼を損ないます。誠実さを持って顧客に向き合い、業者としての責任を果たす姿勢が大切です。
クレームが多い人の特徴は?
クレームを頻繁に起こす顧客にはいくつかの共通する特徴が見られます。まず、細部にこだわりが強く、理想の完成形を明確に持っている方です。
上記のタイプは、理想に少しでも満たない場合に強く不満を感じます。そのため、事前に顧客の要望を細かくヒアリングして対応可能な範囲を明確に伝えることが重要です。
また、「感情的になりやすい」方もクレームを起こしやすい傾向があります。些細な問題でも大きく受け止めるケースが多く、業者側が迅速かつ誠実に対応しないと信頼関係が崩れる可能性が高いです。問題が発生した初期段階で丁寧に対応し、不安や不満を解消することがクレーム回避につながります。
まとめ
本記事では、リフォーム工事のクレームの基本情報やクレームの対処法について解説しました。
リフォーム工事の主なクレームは以下の3つです。
- 仕上がりに関するクレーム
- 工期に関するクレーム
- 騒音に関するクレーム
これらのクレームを予防する方法は以下の3つです。
- 事実確認のうえ謝罪する
- 記録に残す
- クレーマーには法的措置を検討する
特に記録を残すことは、クレームの早期解決・悪質なクレーマーに対処するために重要です。
クレームの記録は一括管理できるようにしましょう。
おすすめの保存方法は業務効率化システムです。
業務効率化システムでは案件に関するあらゆる情報を一括管理できるため、欲しい情報をすぐに探し出せることがメリットです。
しかし「どのようなシステムを選んでいいかわからない」と悩む方もいるでしょう。
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