太陽光発電の普及に伴い、残念ながら詐欺被害も増加しています。
国民生活センターによると、太陽光発電に関するトラブルは年間2,000件以上の相談が寄せられています。
工務店の営業担当者として、施主を詐欺から守るための知識を身につけることは非常に重要です。
この記事では、太陽光発電詐欺の最新手口から見分け方、契約前に確認すべきポイント、被害に遭った場合の対応策まで徹底解説します。
施主との信頼関係を構築し、安心して太陽光発電を導入してもらうための情報をお届けします。
目次
太陽光発電詐欺事件の最新手口と見分け方
太陽光発電詐欺の手口は年々巧妙化しています。
主な詐欺の手口を把握し、施主に適切なアドバイスができるよう準備しましょう。
架空投資案件の手口と被害事例
架空投資案件による詐欺は、存在しない発電所への投資として資金を詐取する手口です。
「確実に利益が出る」「投資した資金は必ず回収できる」などと謳い、実際には存在しない太陽光発電所への投資として資金を集めます。
2024年には「エスピーシー」や「キーファーフォルスト」といった業者による架空投資詐欺が発覚し、多くの被害者が出ました。
この手口の最大の特徴は、「投資」という言葉を多用し、実際の設備や土地の確認を曖昧にすることにあります。
施主に対しては、太陽光発電は「投資」ではなく生活インフラの一部であると説明し、過度な利益を強調する業者には近づかないよう助言しましょう。
計画的倒産による詐欺の実態
計画的倒産は、契約後に意図的に会社を畳んで姿をくらます悪質な詐欺手法です。
初期の顧客には丁寧な対応をして良い口コミを集め、その評判を利用して急速に顧客数を増やします。
多額の前払い金を集めた後、突如として連絡が取れなくなり、最終的に会社が消滅するという流れです。
「アイワイエコシステムズ」は、約100件の契約を抱えていましたが、35件の工事を完了したのみで倒産。
65件の契約については工事が実施されず、1,000万円以上の被害が出ています。
アイワイエコシステムズの社長は逮捕されていますが、本人は詐欺目的の会社設立ではないと主張しています。
施主を守るためには、会社の設立年や実績数、アフターサービス体制を徹底的に確認するよう促してください。
特に創業間もない会社や、急に宣伝を増やした業者には注意が必要だと伝えましょう。
発電シミュレーション偽装の見分け方
発電シミュレーション偽装は、実際より高い発電量を示して施主を誘導する詐欺手法です。
悪質業者は実際の発電量より20〜30%も多い数値を提示し、短期間での投資回収や大きな売電収入を約束します。
この手口が巧妙なのは、素人には発電量の適正値がわかりにくいという点を悪用している点です。
正確な発電シミュレーションでは、設置場所の日照条件や気象データ、パネルの向きや角度、周辺の障害物などを慎重に考慮します。
不自然に高い発電量（年間1,300kWh/kW以上）を提示する業者に出会ったら、それは警戒信号と考えるべきです。
施主を守るために、JPEAやNEDOの発電量データベースを参照して地域の平均的な発電量と比較するよう勧めましょう。
過大な期待値ではなく、現実的な数値に基づいた判断をサポートすることが営業担当者の責任です。
高額工事費請求の手口と相場との比較
高額工事費請求は、不透明な価格設定で不当な利益を得る詐欺手法です。
悪質業者は見積書の内訳を明確にせず、「一式」という表記で高額な費用を請求します。
このような不透明な請求方法は、後から追加料金を要求するためにあえて不透明にしている可能性が高いです。
なお、太陽光発電設備の適正価格は、住宅用（10kW未満）で1kWあたり25〜35万円程度が相場となっています。
例えば、5kWのシステムであれば125〜175万円程度が標準的な価格帯です。
これを大きく上回る見積もりや、逆に極端に安い見積もりにも注意が必要です。
施主を守るためには、必ず複数の業者から詳細な内訳付きの見積もりを取得し、項目ごとに比較するよう促すことが効果的です。
正しい太陽光発電システムの費用相場を理解したい方は、こちらの記事をご覧ください。
悪質太陽光業者を見抜く5つのポイント
悪質業者には共通する特徴があります。
施主がこれらの警戒サインを見抜けるようサポートすることで、詐欺被害を未然に防げます。
「即決を迫る」「特別価格」の危険な営業トーク
即決を迫る営業トークは、悪質業者の最も典型的な手口です。
「今日契約すれば特別価格」「明日までの限定キャンペーン」「補助金の締切が迫っている」など、焦らせる言葉で冷静な判断を妨げようとします。
こうした手法が危険なのは施主が情報収集や比較検討をする時間を奪い、衝動的な判断に誘導するためです。
太陽光発電設備の導入は数百万円規模の大きな買い物であり、慎重な検討が必要不可欠です。
施主には、焦らせる営業には毅然と断り、十分な情報収集と検討の時間を確保するよう伝えましょう。
正規の補助金制度には通常、余裕をもった申請期間が設けられており、当日中の決断を迫る必要は一切ありません。
「メンテナンス不要」「不具合なし」といった怪しい説明
メンテナンス不要と謳う説明は、太陽光発電の現実を無視した危険な誤りです。
「メンテナンスフリー」「一切の手入れ不要」「故障の心配なし」といった説明は重大な警告サインです。
そもそも2017年の改正FIT法により、住宅用太陽光発電設備でもメンテナンスが義務化されています。
太陽光発電設備は定期的な点検と適切なメンテナンスが必要であり、これを怠ると発電効率の低下だけでなく、最悪の場合は火災などの安全面でのリスクも生じるため、必ずメンテナンスは必要です。
たとえば、太陽光パネルは雨で洗い流される程度では十分な清掃ができず、鳥のフンや落ち葉などの汚れにより年間で1〜5%もの発電量低下が起こりえます。
施主には、年間1〜2回の定期点検が必要であること、そのためのメンテナンス体制が整っている業者を選ぶことの重要性を正直に伝えましょう。
発電データや施工実績を見せない業者の実態
施工実績や発電データを開示しない業者は、信頼性に重大な疑問があります。
信頼できる業者であれば、過去の施工事例や実際の顧客の発電データを喜んで共有するはずです。
悪質業者がこうした証拠を提示しない理由は単純で、実績がないか、あるいは実績を見せると嘘が露呈してしまうからです。
曖昧な説明や「企業秘密」といった言い訳で情報開示を拒む業者には近づかないようアドバイスしましょう。
施主には、施工実績の写真や実際の顧客の発電データ、アフターサービスの内容などを具体的に確認するようすすめましょう。
過剰な発電量予測（1,300kWh以上）
過剰な発電量予測は、悪質業者を見分ける重要な指標です。
日本の住宅用太陽光発電の年間発電量は、地域によって異なりますが、一般的に1kWあたり1,000〜1,200kWh程度が標準的な数値です。
これを大きく上回る1,300kWh/kW以上の予測を示す場合、それは売電収入を過大に見せるための偽装の可能性が高いと考えるべきです。
悪質業者はこの過大な発電予測をもとに、実現不可能な投資回収期間や収益性を謳い、施主を誘導します。
施主には、業者の提示する数値を鵜呑みにせず、第三者機関のデータと比較するよう強く助言しましょう。
また、天候や設置条件によって発電量は変動するため、最低限の発電量予測を基に収支計算するよう伝えることも大切です。
見積書の内訳が不明瞭
不明瞭な見積書は、悪質業者の典型的な特徴です。
太陽光発電設備の見積書には、少なくとも以下の項目が明記されているべきです。
- 太陽光パネルの製造メーカーと型番、枚数、出力
- パワーコンディショナーのメーカーと型番
- 架台や金具類の仕様
- 工事費の詳細（足場設置費用なども含む）
- 保証内容と期間
- アフターサービスの内容
「太陽光発電システム一式」といった曖昧な表記だけで具体的な内訳が書かれていない見積書は、後から「想定外の工事が必要になった」などと追加料金を請求される危険性があります。
また、内訳が不明確だと他社との比較もできず、適正価格かどうかの判断も困難になります。
施主には、各項目の詳細な内訳と仕様を記載した見積書を求めることの重要性を丁寧に説明しましょう。
契約前に必ず確認すべき5つのポイント
太陽光発電設備の導入は長期にわたる重要な投資です。
施主が後悔しない選択をするために、契約前に確認すべき重要ポイントをしっかりとアドバイスしましょう。
発電シミュレーションの正しい見方
発電シミュレーションは適正な内容か、正確なデータに基づいているか確認しましょう。
正確なシミュレーションを見分けるポイントは、使用されている気象データが最新かつ設置場所に即したものかどうかという点にあります。
地域ごとの日照時間や気象条件は大きく異なるため、全国平均や遠方のデータを使用したシミュレーションは信頼性に欠けます。
また、適切なシミュレーションは太陽光パネルの設置角度や方位、周辺建物や樹木による影の影響も正確に考慮されているはずです。
さらに、パネルの経年劣化（一般的に年0.5〜1%程度）も計算に含まれているかをチェックしなければなりません。
施主には、複数の業者からシミュレーションを取得し、その前提条件や計算方法を比較するよう伝えましょう。
複数業者からの見積もり比較の重要性
複数の業者から見積もりを取ることは、最適な選択をするための基本中の基本です。
最低でも3社からの見積もりを取得し、価格だけでなく提案内容や対応の質を総合的に比較してください。
比較すべきポイントは、使用する機器のメーカーと品質、保証内容と期間、アフターサービスの充実度、工事の詳細と施工方法、施工実績と評判など多岐にわたります。
価格だけを見て最安値を選ぶと、質の低い施工や機器、不十分なアフターサービスに騙されるリスクがあります。
各業者の見積もりを比較する際には、同じ条件（パネル出力、メーカー、工事内容など）で揃えることで、真の意味での比較が可能になります。
また、各業者の対応の丁寧さや質問への回答の明確さも、将来的な関係性を予測する重要な判断材料です。
施主には、時間をかけてでも複数の業者と丁寧に話し合い、総合的な視点から判断するよう助言しましょう。
施工実績とメンテナンス体制の確認方法
施工実績とメンテナンス体制は、業者選定において最も重視すべき点の一つです。
施工実績については、単に「○○件の施工実績があります」という口頭の説明だけでなく、実際の施工写真や顧客の声を確認するよう伝えましょう。
理想的には、施工現場の見学や既存顧客への問い合わせができる業者が望ましいです。
メンテナンス体制については、定期点検の内容や頻度、費用、緊急時の対応方法などを具体的に確認することが重要です。
自社でメンテナンスを行う業者と外部委託している業者では、対応の速さや責任の所在が異なる点にも注意が必要です。
また、メーカー保証とは別に施工業者独自の保証があるかどうかも重要なチェックポイントとなります。
施主には、太陽光発電設備が長期間にわたって使用するものであることを強調し、施工後も長期的な関係を築ける業者を選ぶことの重要性を伝えましょう。
支払い条件とクーリングオフの確認
支払い条件の確認は、リスク管理の観点から極めて重要です。
前払い金が全体の何割を占めるか、工事の進捗に応じた分割払いが可能かをしっかりチェックするよう助言しましょう。
全額前払いを要求する業者は非常に危険であり、工事完了前の大部分の支払いを求める業者も避けるべきです。
理想的な支払い条件は、契約時に一部、工事着手時に一部、そして工事完了・検収後に残金を支払うという段階的な方式です。
また、訪問販売の場合はクーリングオフ制度が適用されることを必ず確認しましょう。
契約書にクーリングオフに関する記載があるか、その手続き方法についても確認しておくことが重要です。
施主への適切な説明方法と信頼構築のコツ
施主との信頼関係構築は、営業担当者として最も大切な仕事の一つです。
太陽光発電の導入にあたっては、メリットだけでなくデメリットや注意点も含めて誠実に説明することが信頼の第一歩となります。
一時的な売上よりも、施主の長期的な満足と信頼を優先する姿勢が重要です。
説明の際には、施主の住宅環境や電力使用状況を十分に理解した上で、そのニーズに合った最適なシステム提案を心がけましょう。
「この家には、このサイズ・この設置方法が最適です」と、根拠を示しながら説明することで説得力が増します。
また、専門用語を多用せず、わかりやすい言葉で説明することも大切です。
太陽光発電詐欺の被害対応策
残念ながら詐欺被害に遭ってしまった場合でも、適切な対応策を知っていれば被害を最小限に抑えられます。
こうした知識も施主に提供することで、万一の事態に備えた安心感を提供できます。
クーリングオフ制度の活用方法（8日以内の対応）
クーリングオフ制度は、契約後の冷静期間を設けた消費者保護のための重要な制度です。
訪問販売で契約した場合、契約書面を受け取った日から8日以内であれば、契約解除が可能となります。
この制度が強力なのは、業者側の承諾なしに一方的に契約を解除できる点にあります。
クーリングオフ書面には、契約年月日、商品名、販売会社名、「契約を解除します」という明確な意思表示、申込者の氏名・住所・連絡先、日付を漏れなくメールまたは書面に記載して手続きを実施しましょう。
業者による不実告知（嘘の説明）や重要事項の不告知があった場合は、消費者契約法に基づく取消しが可能なケースもあります。
施主がクーリングオフを検討している場合は、できるだけ早く行動するよう促し、必要に応じて書面作成のサポートを行いましょう。
消費者相談窓口（消費者ホットライン188など）の活用法
困ったときには消費者ホットライン188の専門機関に相談する方法も知っておきましょう。
消費者ホットライン「188（いやや！）」は全国どこからでも最寄りの消費生活センターに接続され、専門家に相談できる便利な窓口です。
相談は無料で、専門の相談員が状況に応じた適切なアドバイスを提供してくれます。
相談時には、契約日時と内容、業者の名称と連絡先、これまでのやり取りの経緯、支払い状況、そして契約書や見積書などの書類を整理しておくと効果的です。
太陽光発電に関する専門的な相談であれば、一般社団法人太陽光発電協会（JPEA）の相談窓口も有効な選択肢です。
施主には、問題を一人で抱え込まず、専門機関に早期相談することの重要性を伝えましょう。
法的措置を検討する際の証拠収集と相談先
詐欺被害が深刻な場合、法的措置を検討することも必要です。
詐欺の立証には客観的な証拠が不可欠であり、口頭の約束だけでは法的に認められにくいからこそ、証拠収集が極めて重要になります。
契約書、見積書、カタログ、営業担当者との会話記録、メールのやり取りなど、あらゆる関連資料を丁寧に保管するよう施主に助言しましょう。
口頭での説明内容はその場でメモに残し、可能であれば録音しておくとさらに強い証拠になります。
収集した証拠をもとに、内容証明郵便による契約解除の通知、少額訴訟、民事調停などの法的手段を検討することができます。
法的措置の相談先としては、初回無料相談を行っている弁護士事務所や、日本弁護士連合会のホームページから消費者問題に詳しい専門家を探すと良いでしょう。
太陽光発電詐欺についてよくある質問と回答
施主から寄せられる疑問に適切に答えられるよう、よくある質問とその回答を押さえておきましょう。
正確な知識での丁寧な対応が、信頼関係構築の基盤となります。
太陽光発電詐欺の被害に遭わないためにはどうすればいいですか？
太陽光発電詐欺を避けるには、情報収集と冷静な判断が何よりも大切です。
急な訪問販売や電話勧誘には警戒心をもち、その場での契約は絶対に避けるよう助言しましょう。
詐欺業者は検討時間を与えず即決を迫る手法を用いるため、「今日だけの特別価格」などの言葉に惑わされないことが重要です。
必ず複数の業者から見積もりを取得し、提案内容や価格を丁寧に比較検討するよう促しましょう。
施主には、「急いで決める必要はない」ことを強調し、時間をかけて納得のいく選択をするよう伝えましょう。
信頼できる太陽光発電業者を見分ける簡単な方法はありますか？
信頼できる業者を見分けるには、いくつかの重要なチェックポイントがあります。
まず、会社の設立年数と太陽光発電の施工実績数を確認しましょう。
長年の実績がある業者は、技術力とアフターサービスの信頼性が高い傾向にあります。
次に、施工実績の写真や具体的なデータを積極的に開示するかどうかをチェックしましょう。
実績に自信がある業者は、過去の施工事例や顧客の声を喜んで共有してくれるはずです。
太陽光発電はやめたほうがいいですか？
太陽光発電自体は優れた再生可能エネルギーであり、適切に導入すれば多くのメリットがあります。
詐欺事例があるからといって太陽光発電そのものを避ける必要はなく、信頼できる業者を選ばなければなりません。
太陽光発電には、電気代の節約、CO2削減による環境貢献、災害時の非常用電源確保といった明確なメリットがあります。
特に近年の電気料金高騰を考えると、自家発電による経済的メリットは以前より大きくなっています。
太陽光発電が「やめた方が良い」と言われる理由については、こちらの記事をご覧ください。
まとめ
太陽光発電詐欺から施主を守るためには、正確な知識と適切なアドバイスが欠かせません。
この記事で紹介した詐欺の手口や見分け方、対策法を理解し、施主に寄り添ったサポートを提供しましょう。
太陽光発電は適切に導入すれば、経済的・環境的に大きなメリットをもたらすエネルギーシステムです。
施主に「急いで決める必要はない」ことを伝え、複数の業者から見積もりを取り、十分な検討時間を確保してもらうことが重要です。
信頼できる太陽光発電業者を施主に紹介したいが、どの業者を選定して良いかわからないと悩む工務店の営業担当の方もいるはずです。
建築現場博士がおすすめする太陽光発電システムは『ダブルZERO』です。
太陽光発電システムの設置と災害対策を初期費用0円でおこなえます。
ダブルZEROを提供しているSolaCoe株式会社は、新築住宅向けに4,000件の太陽光発電システムを設置した実績とノウハウを持っています。
太陽光発電システムの申請代行もおこなっており、太陽光発電システムの経験がない工務店様でも心配はありません。
またオンライン・オフライン形式での勉強会開催や提案ツールの提供をおこなっており、太陽光発電が未経験であっても安心して施主様に提案が可能です。
