電気工事の見積作成は、多種多様な材料の積算や複雑な歩掛計算が必要なため、手作業では多大な時間と労力がかかります。
そこで注目されているのが電気工事向けの見積ソフトです。
本記事では、見積ソフト導入のメリット・デメリットや選び方のポイント、さらには現場で実績のある人気ソフト7選を詳しく解説していきます。
目次
電気工事の見積もりとは

電気工事の見積もりは、工事に必要な材料費、施工費、経費を正確に算出し、工事価格を決定する重要な作業です。
見積書は発注者との契約の基礎となるだけでなく、適正な利益を確保するための重要な書類でもあります。
電気工事見積書の基本的な構成要素は以下の3つです。
- 材料費:電線、配管、照明器具などの資材費用
- 施工費:作業員の人件費や機械設備の使用料
- 経費:現場管理費、一般管理費、法定福利費など
これらの要素を正確に積算し、工事の規模や内容に応じた適切な見積金額を算出しなければなりません。
基本的な見積書の作成方法や書き方についてまとめた記事も参考にしてください。
電気工事の見積もり作成における課題

電気工事の見積もり作成では、手作業による様々な課題が存在します。
これらの課題は工事の収益性や業務効率に大きく影響を与えかねません。
まずは自社で解決すべき課題を洗い出し、その課題を解決できる電気工事見積もりソフトを選びましょう。
作業が煩雑で時間がかかる
電気工事の見積もりでは、配線器具や照明器具、配管材料など、数多くの資材を積算する必要があります。
それぞれの材料について、メーカーのカタログから単価を確認し、数量を拾い出し、計算するという作業を繰り返すため、1件の見積書作成に膨大な時間がかかってしまいます。
この時間的なロスは他の業務に影響を与えるだけでなく、迅速な見積提出を求められる案件への対応も難しくなるでしょう。
ミスのリスクが高い
手作業での見積もり作成では、単価の転記ミスや数量の入力間違い、計算エラーなど、人為的なミスが発生しやすい状況です。
たとえ1つの材料で数百円の誤差であっても、大規模な工事では積み重なって大きな金額の違いとなり、工事の採算性を大きく損なう可能性があります。
特に電気工事は使用する材料が多いため、このリスクは他業種に比べて高くなります。
見積書の統一性が取れない
複数の担当者が見積書を作成する場合、それぞれが独自の様式や計算方法を用いてしまいがちです。
これにより、社内での確認作業が煩雑になるだけでなく、同じ会社から提出される見積書の体裁が異なることで、お客様に対して統一感のない印象を与えてしまう恐れがあります。
また、歩掛かりや経費の計算方法が担当者によって異なると、適正な利益確保も難しくなります。
データの管理が困難
紙の見積書やエクセルファイルを個別に保存する従来の方法では、過去の見積データの検索や再利用が非常に手間のかかる作業となります。
また、担当者の異動や退職時の引継ぎも複雑になり、貴重な見積データが十分に活用されない事態も発生します。
さらに、紙での保管は保管スペースの確保も必要となり、長期的なコストにも影響が出るリスクがあるでしょう。
このように、従来の電気工事の見積もり作成方法を続けていると、リソースだけでなく会社の利益の計上にも影響が出るリスクがあります。
そこで活用したいツールが、電気工事の見積もりソフトです。
電気工事の見積もりソフト導入のメリット・デメリット

電気工事の見積作成において、専用ソフトの導入により業務効率を飛躍的に上げることができるでしょう。
しかし、ソフトの導入にはメリットだけでなくデメリットも存在することを理解しておきましょう。
ここからは具体的なメリットとデメリットを解説していきます。
電気工事の見積もりソフト導入のメリット
まず電気工事の見積もりソフトの導入により得られるメリットを4つ解説します。
正確な積算・見積が可能に
電気工事見積ソフトには、最新の材料単価や歩掛データが搭載されています。
材料マスタから選択し数量を入力するだけで、正確な積算が可能です。
従来の手計算による人為的ミスを防ぎ、工事の採算性を確保しながら効率の良い見積もり作成ができるでしょう。
業務効率の大幅な向上
見積ソフトを使用することで、従来の手作業と比べて作業時間を大幅に短縮できます。
過去の見積データの流用や、材料の一括選択機能により、効率的な見積書作成が可能です。
これにより施工管理者や営業担当者に時間的余裕が生まれ、長時間労働や業務負荷の高さなどの問題も解決するでしょう。
書式の統一と標準化
見積ソフトを導入することで、社内の見積書フォーマットが統一されます。
担当者による書式のばらつきがなくなり、見積書の品質が向上するため施主からの信頼も厚くなるでしょう。
また、電力会社への申請書類など電気工事特有の書類作成にも対応しているため、書類作成業務全体の効率化が図れます。
データの一元管理と共有
クラウド型の見積ソフトでは、見積データをサーバー上で一元管理できます。
過去の見積データを簡単に検索・参照でき、社内での情報共有もスムーズです。
また、データのバックアップも自動的に行われるため、紛失のリスクも軽減されます。
電気工事の見積もりソフト導入のデメリット
次は電気工事の見積もりソフト導入に伴うデメリットを解説します。
初期導入コストの負担
電気工事向けの見積ソフトは、一般的な見積ソフトと比べて高額になる可能性があります。
搭載しているデータが多く、また図面からの数量拾い出しなどの機能を備えた高機能の製品であるためです。
ソフトの種類や機能によっては数十万円の初期費用が必要となることもあるため、削減できる将来的なコストとのバランスを考える必要があり亜mす。
操作習得の時間が必要
新しいシステムの導入には、操作方法の習得期間が必要です。
特に IT に不慣れな社員にとっては、習得に時間がかかる可能性があります。
この期間中は一時的に業務効率が低下したり、ミスの対応に追われる可能性があるでしょう。
事前にマニュアルを整備して操作方法を周知したり、システム会社が提供する研修などに参加の機会を与えて、従業員の操作習得を促す必要があります。
システム更新や保守の必要性
法改正や新しい材料の登場に対応するため、定期的なシステムの更新が必要です。
また、パソコンやネットワーク環境の保守も必要となるため、保守コストについても検討しなければなりません。
なお、クラウド型のシステムであれば保守運用は全てサービス提供会社で実施するため、自社での保守作業は不要となります。
電気工事の見積もりソフトの選び方

電気工事の見積ソフトを選ぶ際は、自社の業務特性や規模に合わせた検討が必要です。
以下の観点から最適な電気工事の見積もりソフトを選定しましょう。
インストール型かクラウド型か
見積ソフトには、パソコンにインストールして使用する「インストール型」と、インターネットを介して利用する「クラウド型」があります。
インストール型は通信環境に左右されず安定した動作が期待できること、高いセキュリティが魅力です。
一方でクラウド型は場所を選ばず利用でき、データのバックアップや保守運用も自動でおこなわれるため、手間なく電気工事の見積もりソフトを導入できます。
なお、費用面においてはインストール型は「初期費用が高い傾向」、クラウド型は「初期費用や月額費用は安いが、継続的に料金がかかる」形式です。
費用負担を抑えられる意味ではクラウド型の方が優れていますが、継続的に料金がかかり続けるため、総合的なコスト面を比較しましょう。
クラウド型見積もりソフトの導入メリットについてより詳しくまとめた記事もご覧ください。
導入目的と必要機能の明確化
見積業務の何を改善したいのか、具体的な目的を明確にすることが重要です。
電気工事の図面作成から工事の進捗管理まで目指す場合は、見積もりソフトのなかでも総合的な業務管理システムを導入しましょう。
反対に見積もり作成業務だけを効率化したい場合は、余計な機能が搭載されていない見積もり専門のソフトを選ぶべきです。
まず自社でなぜ電気工事の見積もりソフトを導入したいかを検討し、目的を明確にしたうえでソフトを選びましょう。
電気工事業特有の機能
電気工事業特有の機能を有していることも必須条件です。
次のような電気工事に特化した機能の有無を確認しましょう。
- 電設資材の材料マスタの充実度
- 歩掛計算への対応
- 複合単価の計算機能
- 電力会社への申請書類作成機能
上記機能が搭載されていない場合、電気工事の見積もり作成に付随する業務は従来通り手作業等で実施しなければならないためです。
必要と思われる機能を洗い出したうえで、ニーズに合ったソフトを選びましょう。
サポート体制の充実度
導入後のサポート体制は非常に重要です。
電話やメールでの問い合わせ対応はもちろん、リモートサポートや訪問サポートなど、手厚いサポート体制が整っているかを確認しましょう。
また、導入後のカスタマイズの相談などについても柔軟に対応できるかを確認し、今後システムを拡張させる際に支障が起きないように準備しておいてください。
既存システムとの連携可否
会計ソフトや在庫管理システムなど、既存のシステムとの連携が可能かどうかも重要なポイントです。
システム間でデータ連携ができないと二重入力などの手間が発生し、かえって業務効率が低下する可能性があるためです。
自社で使用しているソフトウェアをリストアップし、問い合わせ時に連携の可否を確認しておきましょう。
コストパフォーマンスの検討
初期費用や月額利用料だけでなく、保守費用やアップデート費用なども含めた総合的なコストを検討しましょう。
なお、電気工事見積もりソフトは補助金や税制優遇措置の対象となる場合があるため、ホームページ等で確認しておいてください。
おすすめの電気工事見積もりソフト7選

電気工事業界で実績のある見積ソフトを、特徴や機能を詳しく解説していきます。
製品名 | ![]() AnyONE | ![]() | ![]() みつもりランド | ![]() 積算らいでん | ![]() PlusCAD電気α | ![]() JS楽打 |
評価 | (4.5 / 5.0) | (4 / 5.0) | (3.5 / 5.0) | (3 / 5.0) | (2.5 / 5.0) | (2.5 / 5.0) |
補助金・助成金 | 2024年対応 | 2023年対応 | 掲載なし | 掲載なし | 掲載なし | 掲載なし |
料金 | お問い合わせ | ・初期費用12万円~51万円 ・最低月額利用料金1万円~3万円 ・ユーザー追加2,000円/1ユーザー | 98,000円(税抜) | 詳細見積もり | 詳細見積もり | 詳細見積もり |
デモ | 無料体験デモ | 無料体験デモ | 掲載なし | オ掲載なし | デモサイトあり | デモサイトあり |
基本機能数 | 8 | 18 | 8 | 24 | 9 | 4 |
スマホアプリ | あり | なし (スマホからの使用は可能) | なし | なし | なし | なし |
他ソフトとの連携 | あり (エクセルやCSV形式データの引き継ぎも可能) | あり | 掲載なし | 同社のシリーズと 連携可能 | 掲載なし | 掲載なし |
オプション カスタマイズ | ・各種帳票カスタマイズ ・エクセル修正レクチャー | カスタマイズ可能 (別途有償対応) | 別途材料データ購入可能 | EXCELとの連携サブシステム/実行予算書作成システム/統計概算等 | 掲載なし | 掲載なし |
アフターサポート | ・無料ヘルプデスク ・バージョンアップ(自動配信) ・オンライン打ち合わせ ・追加講習 | ・メール/電話 ・動画マニュアル ・リモート研修 | 保守管理無料 | 掲載なし | 訪問サポート/電話サポート/通信サポート/LINEサポート | 導入指導サポート/電話サポート/遠隔操作サポート |
公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
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AnyONE

AnyONEは工務店やリフォーム会社向けに開発された統合管理システムですが、電気工事会社での利用にも適しています。
導入企業は3,400社以上、お客様継続率は99.5%を誇り、多くの工務店や電気工事事業者から利用されているツールです。
- エクセルライクな操作性で、ITが不慣れな方でも使いやすい
- 見積から実行予算まで一気通貫の管理が可能
- クラウド型で、外出先からでもデータにアクセス可能
- 顧客管理から工事管理まで幅広い機能を搭載
- 複数の図面・写真データを一元管理
電気工事の見積もり作成から契約管理、工事からアフターまで統合管理できるため、システムの統合や一元管理を目指す企業におすすめです。
操作感がエクセルと似ておりITに不慣れな方でも使いやすいこと、またクラウド型で電気工事の見積書をいつでも確認できるなど、現代のDXや働き方改革にもマッチしています。
なお、導入時は導入企業の課題や希望に合わせたカスタマイズするため、費用は問い合わせが必要となります。
支払いは月額制でとなっており、買い切りソフトのように莫大な初期費用がかからず、負担を抑えて自社のDXを目指せるでしょう。
AnyONEの便利な機能や効率化について詳しく知りたい方向けの記事もご覧ください。
アイピア

アイピアは建築業に特化した管理システムで、累計導入実績150社、継続率98%を誇る業務効率化ツールです。
電気工事はもちろん、工務店や建設事業者に便利な機能が搭載されています。
- 5階層までの見積対応が可能
- エクセルデータからのコピー&ペーストでの登録に対応
- 原価管理や発注機能との連携が充実
- クラウド型で、どこからでもアクセス可能
- ITに不慣れな方でも使いやすい操作性
見積もり作成においては5階層まで対応が可能で、施主にわかりやすい詳細な見積もり作成が可能です。
また、エクセルとの連携も可能であるため、既存データを取り込んで利用することもできます。
アイピアの特徴や料金、メリットをまとめた記事もご覧ください。
でんきやさんV5

でんきやさんV5は電気設備工事に特化した積算・見積ソフトです。
約11,000件以上の電気工事用材料マスタ、公共工事設計労務単価と材料単価による複合単価を搭載しているため、見積もり計算が効率化します。
- 11,000件以上の電気工事用材料マスタを標準搭載
- 国土交通省標準歩掛と民間用歩掛に対応
- 複合単価の同時計算が可能
- 図面の分割取り込みに対応
- 法定福利費計算機能搭載
その他図面の分割取り込みに対応しているなど、電気工事業社の痒いところに手が届くシステムといえるでしょう。
利用料金は買い切り版が71万円(税抜)、サブスク型が12,000円(税抜)で利用できます。
みつもりランド

みつもりランドは電気設備・配管機械工事業に特化した見積積算システムで、設備工事全般に対応しています。
平成4年にリリースされてから30年以上建設業界で支持を得ているソフトウェアで、シンプルで見やすいUI、豊富なマスタデータで電気工事の見積もり作成に役立ちます。
- 材工分離方式、複合単価方式、混合方式に対応
- 共通費の自動算出機能を搭載
- 法定福利費計算が可能
- 豊富な積算用材料データを別売りで提供
- ユーザーのレベルに合わせた3種類の処理メニュー
積算機能が非常に豊富かつ、柔軟性に富んだ設定項目や出力方式で、さまざまな工事の見積もりに利用できる点が強みです。
保守費用が無料で初期費用もソフト購入費の98,000円(税抜)のみと、安価に利用できる電気工事見積もりソフトです。
積算らいでん

積算らいでんは、電気工事業版の積算システムで、全国でもトップクラスの導入実績を誇ります。
また、同社が提供している他のシリーズ製品との連携が可能で、さまざまなデータを連携させて業務に活用できる点が特徴です。
- 充実した単価マスタを搭載
- 材工別単価と複合単価、労材別単価を提供
- 多様な歩掛の自動算出機能を搭載
- クラウド型とインストール型から選択可能
- シリーズ製品「原価らいでん」「取込名人」との連携
積算らいでんは充実した単価マスタを搭載しており、そのデータを活用して見積書作成が可能なため、積算および見積書作成の時間を大幅に短縮できます。
さらに、複雑な歩掛の計算も自動算出が可能となっており、経験の浅い営業担当でも簡単に電気工事の見積もりが可能です。
利用費用については問い合わせとなるため、以下のボタンよりお問い合わせください。
PlusCAD電気α

PlusCAD電気αは、電気工事専用のCADソフトと見積機能を組み合わせた統合システムです。
業務効率化成功率が平均86%以上、導入企業15,000社以上の実績があり、多くの電気設備業者に支持されています。
- 図面作成と見積の連携により効率的な作業が可能
- 約50,000点の電材データを収録
- 設定金額を入力し、選択材料内で金額を割り振る機能を搭載
- 分かりやすい日本語表記のメニュー
- 夜間や土曜日でもサポートを受けられる充実したサポート体制
1つのツールで図面作成と見積もり業務を統合できるため、図面作成と数量の拾い出し、見積もりの作成までがスムーズに進みます。
拾い出しも自動であるため、拾い漏れもなくさらに搭載している50,000点の電材データを使えば見積もり作成も効率的。
さらに、無償での訪問サポートや電話サポートなども充実しており、運用に関する疑問があっても安心です。
JS楽打

JS楽打は、電気図面作成CADの機能も搭載した自動見積ソフトです。
簡単な操作性で作業時間が1/3まで短縮した実績があるなど、電気工事の見積もり作成を効率化に役立ちます。
- コンセント、スイッチ、火災警報、電灯照明などの電気シンボルを標準装備
- 電力会社の申請書類作成に対応
- シンボル自動壁付け、重なった配線の自動切断など多彩な自動機能
- インストラクター訪問、専任オペレーターによる電話や遠隔サポートを提供
- AUTOCADデータ、JWCADデータ、PDFデータの読み込みが可能
図面の取り込みやシンボルの配置、数量の拾い出しまで自動で実施し、さらに見積書作成も同じツールで完結します。
拾い出しの手間を大幅に削減できるため、従来よりも電気工事の見積書作成が楽になるはずです。
まとめ
電気工事の見積作成において、専用ソフトの導入は業務効率化の切り札となります。
本記事で紹介した7つのソフトはいずれも実績があり、信頼できる製品です。
見積ソフトの導入は、一時的なコストは必要となりますが、長期的に見れば業務効率化による大きな効果が期待できます。
まずは自社の課題を明確にし、それを解決できるソフトを選択することで、確実な業務改善を実現できるでしょう。